僕は可能性にかけてタイミングを見計らっていたのだが、男は相当酒に強いのか、眠りこけてくれる様子もなかった。それとなく行動に移す事は出来ないらしいと諦めて、僕は彼の話が一段落した折りに、提案して了承を得る方向に作戦を変えた。

「僕は【夢診療】という片書きで、カウンセリングをしています」
「夢診療……?」

 男が僅かに眉根を寄せた。それは本心から不思議がっているといったようにも見受けられて、僕がこれまで多く見掛けてきたような、不信感や疑わしいとする拒絶は感じなかった。

 見た目はクールで少々強面だが、珍しくも信心を持ったタイプの人間らしい。僕は、その新鮮な様子に安堵しつつ「はい」と頷いて話しを進めた。

「僕は、夢渡しの能力を持っています。普段は、兄の仕事の手伝いをしているのですけれど――ああ、兄も僕の能力を知っている一人なんです。僕は本業でやっているわけではなくボランティアでして、必要な依頼人があれば、知人友人の紹介で仕事を引き受ける、という感じです」