処置が終わると、親父の口は閉じられ、シーツの中の手が祈るように組み合わされた。葬儀社の男が「口しか直していません。とても安らかなご遺体です」と労うように言って、俺に微笑みかけた。

 まるで生きているように、彼らは丁寧に親父の遺体を扱った。俺は親父を乗せたベッドと共に、葬儀社の人間と奥のエレベーターから一階へと降りた。案内された先は仏間で、そこには担当医と、親父に関わった看護師達が神妙な表情で待っていた。

 促されるまま、俺は線香を上げた。

 葬儀社の男が「黙礼」と言い、全員無言のまま親父に向かって頭を下げた。

 神聖な儀式なのだと感じ、俺は泣かないように努めた。担当医が俺に「お疲れ様でした」と言ったので、俺は「ありがとう」と震える声で答えた。本当に、感謝が尽きないのに、それを伝える言葉は他に思い浮かばないでいた。


 長期入院をして約一ヶ月ぶりに、親父は穏やかな表情を浮かべる顔に小さな白いシーツをかぶされ、病院から永久退院した。

 俺は親父の荷物を乗せた自分の車に乗り込み、親父を乗せた霊柩車の後に続いて、静まり返った夜の国道に車を走らせた。