「先生は、ゆるやかに脈が落ち続けているのが気になる、とおっしゃっていました。もしかしたらという可能性もありますので――」
連絡をしてくれた病院事務の女性に、俺は「すぐに行きます」と返事をして電話を切った。それから上司に断りを入れ、大急ぎで荷物をまとめて会社を出た。
※※※
病室に駆けつけると、そこには人工呼吸器や脈を測る機械を取り付けられ、二つの点滴を受けている親父が横たわっていた。普段の親父の寝顔を見慣れていたから、その顔から生気が失われて、深い眠りに入っている事がよく分かった。
来院したという知らせを受けた担当医が、時間を見付けてやって来るだろうと予想し、俺は椅子を引き寄せて、何が出来る訳でもなく親父のそばに座った。
ふと、シーツから出ている親父の細い手が目に留まった。
手を取って触れてみると、皮と骨だけの親父の手は、闘病の苦労を物語るように表面の皮膚がしわくちゃだった。俺は、堪え切れず嗚咽をもらしてしまった。室内の温度は生温かいくらいなのに、親父の手は少し冷たかった。
連絡をしてくれた病院事務の女性に、俺は「すぐに行きます」と返事をして電話を切った。それから上司に断りを入れ、大急ぎで荷物をまとめて会社を出た。
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病室に駆けつけると、そこには人工呼吸器や脈を測る機械を取り付けられ、二つの点滴を受けている親父が横たわっていた。普段の親父の寝顔を見慣れていたから、その顔から生気が失われて、深い眠りに入っている事がよく分かった。
来院したという知らせを受けた担当医が、時間を見付けてやって来るだろうと予想し、俺は椅子を引き寄せて、何が出来る訳でもなく親父のそばに座った。
ふと、シーツから出ている親父の細い手が目に留まった。
手を取って触れてみると、皮と骨だけの親父の手は、闘病の苦労を物語るように表面の皮膚がしわくちゃだった。俺は、堪え切れず嗚咽をもらしてしまった。室内の温度は生温かいくらいなのに、親父の手は少し冷たかった。