採用を決めてくれた課長には、感謝している。あのままフリーター生活を続けていたとしたら、俺は親父みたいな荒くれ者になっていた未来もあったかもしれない。

 というのも、俺は会社で過ごす中で、自分が昔から喧嘩っ早かったようだと遅れて気付かされた。負けず嫌いで、自分の意思を曲げない頑固なとろこがある――上司や先輩にそう指摘され、精神的にも大人になれるよう自分を抑える努力をした。


 俺の生活はしばらく順調だったが、俺が本社で部署リーダーに就いた頃、親父が倒れたと病院先から連絡あった。


 安定した日常を邪魔するような父親の存在に、俺は過去に追いやっていた激しい憎しみと嫌悪感が蘇った。電話先の病院事務員に怒りのまま、「関係がないから勝手にやってくれ」と乱暴に告げて電話を切った。

 けれど病院側も諦めなかった。彼の身内は俺しかいないのだと言い、末期癌で数日が峠かもしれない事を必死に説明してきた。最後は涙声になって、情に訴えるような説得までしてきたのだ。