寝ている顔は痩せ細っていて、力なく開いた口から小さく聞こえる寝息は痛々しかった。俺は看護師から「症状は安定に向かっていますよ」の報告を聞き終えると、帰り際に病院のトイレに駆け込んで泣いた。
どうかこれ以上、頼むから親父を苦しめないで下さい、と神に祈った。
親父が一般病棟に移されたのは、それから二日後の事だった。吐血と下血の他、本人の意識も動悸も落ち着いたと、会社の昼休みに連絡を受けた。
親父は俺に伝言を残していて、「煙草が吸いに行けないからハッカの飴玉を買ってきて欲しい」と頼まれた。喉に詰まらせないよう、彼が食べるのを見届けることを事前に忠告され、俺はそれを心に決めて残りの仕事に励んだ。
しっかりと意思疎通が可能になった親父は、俺が来院した時は一般病棟の一人部屋でテレビを見ていた。俺が来るなり「よ、遅かったな」と陽気に笑う。まだ声は少し掠れていたが、その笑顔は、俺がよく知っている元気な親父のものだった。
どうかこれ以上、頼むから親父を苦しめないで下さい、と神に祈った。
親父が一般病棟に移されたのは、それから二日後の事だった。吐血と下血の他、本人の意識も動悸も落ち着いたと、会社の昼休みに連絡を受けた。
親父は俺に伝言を残していて、「煙草が吸いに行けないからハッカの飴玉を買ってきて欲しい」と頼まれた。喉に詰まらせないよう、彼が食べるのを見届けることを事前に忠告され、俺はそれを心に決めて残りの仕事に励んだ。
しっかりと意思疎通が可能になった親父は、俺が来院した時は一般病棟の一人部屋でテレビを見ていた。俺が来るなり「よ、遅かったな」と陽気に笑う。まだ声は少し掠れていたが、その笑顔は、俺がよく知っている元気な親父のものだった。


