それは、俺が二十八歳の誕生日を迎えるまで、あと二ヶ月を切った二月の初旬の事だった。会社で書類作業に追われていた俺は、親父が前触れもなく激しい吐血を起こして倒れたと、緊急連絡を受けた。
苦しみもがく親父を、たまたま機械修理を頼みにきた友人達が発見して、119番通報してくれたらしい。病院まで駆け付けた俺に、親父の友人達は「ベッドからトイレまで血だらけだった」のだと青い顔で状況を手早く説明してくれた。
病院に緊急搬送された親父は、それから三日間は意識が戻らなかった。
◆◆◆
三日ぶりに意識を取り戻した親父は、しばらく思考の混濁が続き、今の状況を把握出来ていないような顔をしていた。俺を見て「イツキ」と名を呟く声は、老人のように掠れており、俺は再会したばかりの頃の親父を思い出して胸が痛んだ。
心拍数などを測る機械に繋がれ、点滴を受けながらベッドに横たわる親父は、露わになった喉仏の筋すら張りつくほどに肉厚が削れ、俺の目にはとても小さく見えた。不意に涙が込み上げそうになったのは、親父が病気で蝕まれている現実を、嫌でも実感し気付かされたからだ。
苦しみもがく親父を、たまたま機械修理を頼みにきた友人達が発見して、119番通報してくれたらしい。病院まで駆け付けた俺に、親父の友人達は「ベッドからトイレまで血だらけだった」のだと青い顔で状況を手早く説明してくれた。
病院に緊急搬送された親父は、それから三日間は意識が戻らなかった。
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三日ぶりに意識を取り戻した親父は、しばらく思考の混濁が続き、今の状況を把握出来ていないような顔をしていた。俺を見て「イツキ」と名を呟く声は、老人のように掠れており、俺は再会したばかりの頃の親父を思い出して胸が痛んだ。
心拍数などを測る機械に繋がれ、点滴を受けながらベッドに横たわる親父は、露わになった喉仏の筋すら張りつくほどに肉厚が削れ、俺の目にはとても小さく見えた。不意に涙が込み上げそうになったのは、親父が病気で蝕まれている現実を、嫌でも実感し気付かされたからだ。


