けれど親父は、月に一度ほどは「気晴らしに行こう」と自分の体調と相談しながら俺を誘った。俺は病院から借りて車に常備している車椅子に彼を乗せ、時間をかけゆっくり買い物に付き合う。そんな時間を、親父が何よりも楽しそうにしているのが、俺には嬉しかった。

 身構えたまま月日は流れ、その年の年末まで、親父は大きな発作も起こさなかった。年末の日中から夕方にかけて、親父の友人が挨拶にやってきて、俺達は賑やかな時間を過ごした。

 親父は陽気に煙草を吹かせて、集った友人達も酒は出さずしきりに煙草を吸った。彼らからの手土産は、親父が飲み食い出来るものだったが、その頃には食欲も少なくなっていて、親父はほんの少ししか口にしなかった。

 こうして、俺と親父は賑やかな年越しを迎える事が出来た。

 けれど恐れていた日は、一刻一刻と俺達の生活に迫り始めていたのだ。