「私としては、食道静脈瘤の破裂という最期を迎えて欲しくないと思っています。とても苦しくて辛いものだからです。けれど、彼の身体では手術する事も出来ないという事を、どうかお許しください」
手術くらい出来ないのかという怒りと、打つ手がないという絶望を彼に当たる訳にもいかず、――俺は少しの間を置いた後、首を左右に振って応えた。
この担当医は、よくやってくれていると思う。病院にしてもそうだ。受け付けの女性や、会計の際によく会う男性事務員、それから各病棟の看護師やリハビリの青年も暖かく接してくれているから、親父は入院中も楽しそうにやれているのだ。
毎回の吐血の処置をしてくれる外科医も、親父のお喋りに根気良く付き合ってくれていた。俺は、それ以上の待遇を求めるだけの不満を、持ち合せてはいなかった。
担当医は、続けて俺に「意思確認をしたいのです」と言った。
それは、親父の心臓が止まってしまった場合、延命処置を施すかどうかというものだった。俺は担当医から説明を受けながら、書類に目を通した。延命処置について記載された文面には、「はい」と「いいえ」で答えるだけの問いが数項目並んでいた。
手術くらい出来ないのかという怒りと、打つ手がないという絶望を彼に当たる訳にもいかず、――俺は少しの間を置いた後、首を左右に振って応えた。
この担当医は、よくやってくれていると思う。病院にしてもそうだ。受け付けの女性や、会計の際によく会う男性事務員、それから各病棟の看護師やリハビリの青年も暖かく接してくれているから、親父は入院中も楽しそうにやれているのだ。
毎回の吐血の処置をしてくれる外科医も、親父のお喋りに根気良く付き合ってくれていた。俺は、それ以上の待遇を求めるだけの不満を、持ち合せてはいなかった。
担当医は、続けて俺に「意思確認をしたいのです」と言った。
それは、親父の心臓が止まってしまった場合、延命処置を施すかどうかというものだった。俺は担当医から説明を受けながら、書類に目を通した。延命処置について記載された文面には、「はい」と「いいえ」で答えるだけの問いが数項目並んでいた。