内臓が食べた物からうまく栄養を摂取できないようになっていたから、親父はヘパという専用の食替えドリンクのようなものが、新たに薬の一つとして加わっていた。味を変える粉がセットになっており、食事の替わりにも飲める代物だ。

 正常な人間であれば、寝ている間に、摂取された栄養が身体の稼働エネルギーへ変換されるようになっている。しかし、肝臓機能が低下している患者は、それが出来ないために、朝になると軽い栄養失調状態に陥るのだ。だから寝る直前に、必要な栄養を余分に摂取しておかなければならない。

 食事制限がある病人には、ヘパは栄養価も水分量も高い代物である。親父は「所詮飲み物だから腹水が減らないんだ」と愚痴り、薬剤師に確認して飲める分だけ飲むようにしていた。その栄養さえ、身体がほとんど摂取出来なくなっている現状なのだ。

 親父は、きちんと考えて食事を摂るようにしている。栄養不足にならないよう、専用の栄養剤に加えて、少しでも腹が減ったらパンも口に運ぶように心掛けていた。