「お前、この前部品を折ったのを忘れていないだろうな? 不器用にもほどがあるぞ」
「ちぇッ、すいませんね。あんたに似ず不器用で」
精密機械の部品が、センチ単位以下の大きさなのが悪いのだ。俺はハンダゴテなんて、親父と再会してから初めて使ったし、馬鹿力は高校時代に運動部で養った才能の一つだから仕方がない。
闘病開始から、そろそろ五年目も見えてきた頃になっても、親父は前向きでどこまでも気力に溢れていた。
けれど、身体の方は確実に弱り続けているため、食事に気をつけているにも関わらず体重は徐々に落ち始めた。同時に腹部の腹水も量が増えていて、水分や塩分、カリウムを制限しても減りにくくなってきたのだ。
◆◆◆
闘病生活五年目、俺が二十七歳を迎えた年の春も、親父は食道静脈瘤の破裂で緊急入院を強いられた。
普段よりも若干大きかった食道静脈瘤の破裂は、処置後の二日間も親父を苦しめた。傷口一つない胃からも血液が滲み出ている事が確認され、親父は一日に数回ほど病室で少量の血を口から吐き、そのたび担当の看護師が甲斐甲斐しく世話をした。
「ちぇッ、すいませんね。あんたに似ず不器用で」
精密機械の部品が、センチ単位以下の大きさなのが悪いのだ。俺はハンダゴテなんて、親父と再会してから初めて使ったし、馬鹿力は高校時代に運動部で養った才能の一つだから仕方がない。
闘病開始から、そろそろ五年目も見えてきた頃になっても、親父は前向きでどこまでも気力に溢れていた。
けれど、身体の方は確実に弱り続けているため、食事に気をつけているにも関わらず体重は徐々に落ち始めた。同時に腹部の腹水も量が増えていて、水分や塩分、カリウムを制限しても減りにくくなってきたのだ。
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闘病生活五年目、俺が二十七歳を迎えた年の春も、親父は食道静脈瘤の破裂で緊急入院を強いられた。
普段よりも若干大きかった食道静脈瘤の破裂は、処置後の二日間も親父を苦しめた。傷口一つない胃からも血液が滲み出ている事が確認され、親父は一日に数回ほど病室で少量の血を口から吐き、そのたび担当の看護師が甲斐甲斐しく世話をした。