話を聞く中で僕がいくつか控えめに質問すると、男はこちらに顔を向けて、目尻に小さな皺を刻むような苦笑を浮かべた。後悔に揺れ、膨れる悲しみに困り果て、それでも自分でどうにか消化しなければと強がるような表情のように思えた。

 副業で続けていた仕事柄、僕は彼の事が放っておけなくなってしまった。

「構いませんよ。続きを話してください。閉店まで、まだ時間がありますから」

 省吾さんに目配せすると、彼は理解したと言わんばかりに傍観者を決め込んでグラスを磨き始めた。きっと彼は、営業終了時刻には外看板の電気を消灯するだろうが、閉店時間を少しくらい過ぎてしまっても、多めに見てくれるだろう。


 僕が話の先を促すと、男は少し思案するようにグラスを持ち上げ、それから、思い出すように語り始めた。