親父は、仏頂面でそう返した。仕事を辞める気はないのだと、その返答が物語っていて、俺はなんでもないような顔をして「そうか」とだけ言って口を閉じた。

 親父が最後まで続けたいというのであれば、俺はそれを応援するべきだと思った。親父の、仕事にかかる経費が収入を上回ってしまう事態になったとしても、きっと俺はその分のお金を出してでも、彼が望む今の生活を続けさせよう。

 馬鹿みたいに甘いなと、俺は思わず苦笑した。

 俺は自分でも驚くほど、今の親父との関係を心地良く感じていた。俺は気持ちを前面に出すような甘い顔と態度は出来ないが、それとなく気付かれないよう、親父を甘やかし続けるんだろうと思った。

「休みの日くらいなら、埃かぶった機械の掃除ぐらいしてやってもいいぜ、親父」
「お前、それだから彼女も出来ないんじゃないか? 俺は可愛くない息子よりも、可愛くて器用で要領のいい娘が欲しいところだぜ」
「ひどいな。ちょいちょい手伝ってやってるだろ」