気付けば季節は、冬になっていた。

 親父の家には電気ストーブしかなかったから、俺がボーナスで冷暖房機を購入して設置した。親父は忌々しいと云わんばかりの顔で、「わざわざそんな金を使わんでも」と愚痴り、設置工事の人間が出入りする中で、俺達はまた口論になった。


 こうして付き合うようになってから分かったのだが、酒を飲んでいない親父は、驚くほどお喋りだ。用もないのに俺を引き止めて、テレビを流しながら、取りとめもなく話題を振る。

 仕事を再開した俺を手助けするように、気に掛けて平日の日中に訪問してくれるようになった親父の友人達が「寂しいからだろう」と苦笑顔でそう言っていた。いつも俺と入れ違いで彼らは帰っていくのだが、どうやら親父に機械の修理を頼んでいる人間もいるようで、帰り際に「よろしくお願いしますね」の一言を付け足していった。

 減塩制限が若干緩くなると、親父が摂取出来る食事の幅がぐっと増えた。量にも制限はあったが、多種類を揃えて少量ずつ楽しむ食事スタイルが自然と確立され、残った料理を胃袋に片付けるのは俺の役割になった。そうやって、二人きりでの年が明けていった。