華延は感嘆の声を上げ、蒼玉色や紅玉色など色とりどりに輝く琥珀糖を見つめた。

 一粒摘まみ上げ、パクンと口に入れた華延は、ゆっくり味わって目を細めた。

「とても美味しいわ」

 華延が気に入ってくれたようなので、雪蓉は安心した。

 琥珀糖は小さな女巫の子供たちの大好物なので、いつも大量に作り、小腹が空いた時や甘いものが食べたくなった時のために毎日持ち歩いていた。

 いつもの癖で懐に入れていたのが、こんなところで役に立つとは。

 華延とお茶を飲みながら、庭に咲く見頃となった梅の花を眺めていると、うっかりここに忍び込んできた理由を忘れそうになる。

 雪蓉は意を決して、話を切り出した。

「取り次ぎもせず、忍び込んでしまい申し訳ありません。ですが、どうしても華延様にお聞きしたいことがあったのです」

「まあ、何かしら?」

 華延は、無邪気な微笑みを浮かべている。

その笑みを見ると、訊ねる内容が愉快なことではないだけに、申し訳なさを助長させた。

「失礼を承知でお伺い致します。劉赫様と華延様との間に何かあったのでしょうか?」

 雪蓉の問いに、華延の笑みが消えた。

 そして、雪蓉から目を逸らし、何かを思い出すように庭の梅の花を見やる。

「……あれは、忘れもしない十四年前。あの時も梅の花が咲いていたわ」

 そうして華延の口から語られたのは、悲しく凄惨な事件の概要だった。