雪蓉は、厨房にある残り物を使って、琥珀糖(こはくとう)を作ることにした。

琥珀糖とは、宝石のように美しい見た目が特徴的な寒天入りの砂糖菓子である。

凝った見た目とは裏腹に、原材料は少ないので、饕餮山にいた頃はよく作っていた。

お菓子は高級品で買えないので、自ら作るしかない。

中でも琥珀糖は、持ち運んで気軽に食べられるし、何より見た目が可愛いので、小さな女巫たちの大好物だった。

それに、劉赫も。

疲れた時などにそっと差し出したら喜ぶだろうと思った。

 原材料が少なく、簡単なものだからこそ、料理人の細やかな腕の違いが如実に現れる。

鍋に砂糖、水、寒天を入れよく混ぜる。ぽつぽつと泡が出てきたら、焦がさないように混ぜながら、とろっとするまで煮詰める。

様々な色合いを宝石のように輝かせるため、雪蓉は丁寧に琥珀糖を作る。

作っていると、今にも小さな女巫たちの笑い声が聞こえてくるようだ。

(会いたいなあ。元気かな。私がいなくて、大変だろうな。泣いていないといいんだけど)

 小さな女巫たちへの思いを琥珀糖に託すように、ゆっくり時間をかけて鍋の中身を煮溶かす。

(やっぱり、頭で考えて計画を練るより、とりあえず行動に移してみよう。どうやって聞き出すかは、その時、その場の雰囲気で考えればいいのよ。なるようになれ、よね)

 悶々と考え込んでいた雪蓉は、琥珀糖を作っているうちに吹っ切れてきた。

鍋から器に移し、様々な色の食紅を加えて、周りを氷水で冷やして固める。

食紅を加える際、あえて透明な部分を残すことにより、宝石のように輝く洗練された色合いの琥珀糖が出来上がった。

 元々、考えるより先に体が動く体質だ。

悩んでいても仕方ない。

昼餉は握り飯しか作らなくていいから、訪問するなら明日の午後だなと算段する。