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「おはよう、朝餉(あさげ)持ってきてあげたわよー!」

 陽気な雪蓉の声と共に扉が開き、お盆を持った官吏が臥室に入り、丸卓子に二人分の朝餉を置く。

 そそくさと退出する官吏に、「あなたも一緒にどう?」と声をかけるが、官吏は雪蓉の言葉に返事もせずに出て行った。

「あの人、私が話し掛けても絶対答えないのよ」

 と雪蓉は不満そうな顔を浮かべる。

 元気そうな雪蓉を見て、劉赫は心が晴れていくのを感じた。

「あら、床が濡れてる。どうしたの?」

「……別に、何でもない」

 ふいっと劉赫は顔を背ける。

割れた水差しは、官吏がすぐに掃除した。

しかし、大量に零れた水は、まだ乾いてはいなかった。

(何でもないってことはないでしょう。よく見ると壁が凹んでるし)

 一体何があったと怪しむも、劉赫は答えてくれそうもない。

それに、なんだかいつもより元気がない。

「まあ、いいわ! それより冷めないうちにいただきましょう」

 対面し、腰をかけ、二人で朝餉を共にする。

 雪蓉が劉赫の食事を作るようになってから、一週間が経った。

毎日顔を合わせているので、劉赫の少しの変化も(かん)づくようになっていた。

 少し青ざめていた顔も、雪蓉の料理を食べるとみるみるうちに赤みが差す。

(本当、美味しそうに食べるわよね。でも、美味しいとは言わないんだけど。褒め言葉が照れくさいのかしら)

「ねえ、美味しい?」

 雪蓉は小首を傾げて、ニヤニヤしながら聞いた。

「……見れば分かるだろ」

「分からないわよ」

 数秒黙ったのち、小さく(つぶや)いた。

「……まあ」

「まあってなによ! 失礼な男ね!」