悲鳴を上げる。
それが、幼き頃の劉赫の悲鳴なのか、夢から覚め寝台の上で寝ている劉赫の口から発せられたのか、彼自身にも分からなかった。
(また、あの時の夢か……)
劉赫は上半身だけ起き上がり、前髪をかきあげた。
動機と息切れが激しい。背中や額にも汗をびっしょりとかいていた。
ふと、寝台の横の小さな卓子を見ると、水差しと杯が置かれていた。
水差しは、磨き上げられた白色の陶器で、朝の光の反射できらりと光った。
そして、陶器に映った自分の顔を見て、劉赫は青ざめる。
光と陶器の形でぐにゃりと揺れている自らの首より上の顔は、兄たちを殺した神龍の顔だった。
体だけ人間で、顔は神龍の姿を見て、劉赫は怒りに任せて水差しを投げる。
大きく飛び、壁に当たった水差しは、甲高い悲鳴のような音を立てて砕け散った。
劉赫は、自分の顔を両手で押さえて俯く。
手の平の感触は、人間の顔だった。
鱗もなければ、鋭く尖った口先もない。
自分の顔は神龍ではないと頭では分かっているが、気持ちが悪くて仕方なかった。
大好きな兄を殺した憎き敵が、自分の体の中にいると思うと、自分が呪われた醜い化け物のような気がするのだった。