創紫(そうし)兄ちゃん!』

 声を揃えて叫んだのは、双子の兄弟だ。

彼らは同じ顔をしているが、雰囲気が正反対であり見間違える者はいない。

二番目の兄は、女性のように線が細く美しい男で、三番目の兄は、やんちゃそうな瞳に、野性的な雰囲気を(かも)し出している。

『うああああ!』

 断末魔(だんまつま)のような叫び声を上げながら、神龍に剣を突き刺したのは、野性的な三番目の兄だった。

 しかし神龍は、針が刺さった程度にしか損傷していない。神龍の目が、三番目の兄に向けられる。

甲斐(かい)!』

 女性のような面立ちの二番目の兄が、三番目を助けるために身を盾にすると、神龍は大きな尻尾を払い、二人を壁に打ち付けた。

二人は衝撃で、首が後ろ側に曲がった。

あっという間に息絶えた二人の兄を見て、劉赫が叫ぶ。

『甲斐兄! 春摂(しゅんせつ)兄!』

 神龍は無情にも、息絶えた二人を食べる。

非情で野蛮な神龍の姿を見て、吐き気がした。

 こんな化け物を神と敬っていたのかと劉赫は怒りを覚える。

しかし、怒りは力となって湧いてはこなかった。

強い兄をいとも簡単に殺した神龍に、自分が勝てるはずがない。

 劉赫は、大好きな兄たちを失った悲しみと、確実に殺される恐怖で、涙が溢れて止まらなかった。

 五本の爪に宝玉を持った神龍は、最後に劉赫を瞳に捕らえた。

(ああ、死ぬ……)

 劉赫は(あらが)う気力を失っていた。

床に座り込みながら、神龍が大きく口を開き、自分に向かってくるのを、身動き一つせず見つめていた。