「どうして私が作った料理は、味を感じることができるのかしら」

「それは食を饗する女巫だからだろう」

「それって、私には仙になれる素質があるってことよね⁉」

 パッと目が輝いた雪蓉を見て、劉赫は眉をひそめる。

「……そうは言っていない」

「そういうことでしょ! そういうことよね! 私にはほんの少しかもしれないけど、力が備わってきたってことよね。よっし! 俄然やる気が湧いてきた!」

「いや、お前には素質の欠片もないと思うぞ。一生頑張っても仙になれず死ぬのが目に見えている。諦めろ」

 雪蓉は、劉赫の言葉をまるで聞いていない。

飛びはねて全身で喜びを表現する雪蓉に、劉赫は大きなため息を吐いた。

 劉赫が食事をあらかた終えると、それに気が付いた雪蓉は、お茶と共に食後の甘味を差し出す。

 こういうところはよく気が付くし、かいがいしい。

倒れている劉赫を拾って看病した時もそうだが、けっこう世話好きだ。

芝麻球(あげだんご)も作ったの。あなた、甘いもの好きでしょ。甘えん坊だものね」

「だから、それをいうなら甘えん坊じゃなく、甘党だ。わざとか?」

 劉赫は箸を置いて、本気で嫌そうな顔をした。

「言い間違えただけじゃない。それくらいで怒るなんて、器の小さい男ね」

 劉赫は、うっと息を詰まらせて、項垂(うなだ)れながら置いた箸を手に取った。

 静かに茂麻球を口にする。

噛むと、甘い餡子の味が口の中に広がり、自然と笑顔になった。

 体中から、隠しきれないほどの喜びの情緒が溢れている。

美味しいと言わなくても、充分すぎるほど雰囲気で伝わってくるので、雪蓉は嬉しかった。