雪蓉の言葉に、甘い雰囲気は一瞬で壊された。

意外と冷静に自己分析しているようで、感心してしまう。

(いや、いかんだろう、仙は駄目だ、とにかく駄目だ)

「ならばわざわざ仙にならなくてもいいだろう。

霊獣の近くに住み続け、この土地から出られない幽閉されたような身の上だ」

「それでいいのよ。私がこの土地に居続ければ、身よりのない子供たちが巣立った後も、帰る場所となれる。故郷ができるの。

私は仙婆のように、来る者拒まず、去る者追わず、いつでも帰ってこられる場所として、あり続けたい」

 雪蓉の瞳に迷いはなかった。

強い意思、仙の力が最も好むものだ。

四凶の側にいることも、仙の力を呼び寄せる要因になる。

 仙になる素質と、環境は揃っている。このままでは本当に雪蓉は……。

「仙にはさせない。絶対にだ」

 男は、冷淡な眼差しで、まるで命令を下すように言った。

「な、なんでよ! なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないの!」

 怒って抗議する雪蓉の腕を掴み、引き寄せる。

抵抗する間もなく押し付けられた唇に、雪蓉は目を丸めて固まった。

「お前はもう、俺のものだからだ」

 次の瞬間、静かな夜の闇の中で、バチーンと頬を叩く音が響き渡った。