「それは好都合だ。それにしてもお前、鍬がやけに似合うな」

 劉赫は目を細めながら笑った。

ああ、この笑顔懐かしいな、好きだったなと雪蓉は思った。

「うるさいわね。そうよ、私は綺麗な簪よりも鍬が似合う女なのよ」

「うん、鍬の似合う雪蓉も好きだ」

 さらりと爆弾発言を投下されて、一瞬にして雪蓉の顔が赤くなる。

「はあ⁉ なに言ってんの! 正気⁉」

「簪も似合うけどね、雪蓉はなんでも似合う」

「いや、だから、なに⁉ なんなの⁉ え、あんた誰⁉ 劉赫の偽物⁉ ていうか、これ夢⁉」

「夢じゃない、本物だ」

 劉赫はやけにすっきりした笑顔で、徐々に近付いてくる。

劉赫が歩を進めるたび、雪蓉の鼓動はどんどん激しくなっていく。

「だからなんであんたがここにいるのよ。臣下は? 政務は⁉」

「全部捨ててきた」

「は?」

 なんでもないことのように言われた言葉の重みに、雪蓉は固まった。

今度は別の意味で胸の鼓動が速くなる。