事態が再び急展開するのは、ある晴れた午後のことである。

雪蓉が鍬を持ちながら畑仕事をしていると、まるで近所に遊びに来た幼馴染のような気軽さで、一人の男がやってきた。

「よう、久しぶり」

声を掛けられた雪蓉が鍬をおろして振り向くと、そこには簡易な黒色の深衣を着て髪をおろした美形の青年が立っていた。

「劉赫⁉ どうしてここに⁉」

 お付きの者も従えず、馬にも乗らず、たった一人で饕餮山に来ている。

皇帝が近所を散歩するような場所ではないし、そもそもここは男子禁制だ。

「雪蓉一人? 他の女巫は?」

 劉赫は雪蓉の質問に答えることなく、辺りを見渡した。

雪蓉は、ずっと会いたかった人物が目の前にいることに驚いて、これは夢かと思いながらも、必死で動揺を押し隠す。

本当は泣きだしたくなるくらい会えて嬉しかった。

鍬を投げ捨てて、抱きつきたいほどに。

でもそんなこと、できない。

「女巫たちはもう家に帰ったわ。それよりも質問に答えなさいよ、なんで皇帝のあなたがここにいるのよ」

 きつい言葉の裏で、雪蓉の手は震えていた。

劉赫の顔を直視できずに、視線がさまよう。

 会いたかったなんて、言えるはずがない。

自分から、彼を突き放したのに。