いつまでも仙のところで甘えているわけにはいかない。

ここにいたいならば、それなりに覚悟しなくては。

「……仙になるしか、ないか」

 ポツリと雪蓉が零した言葉に、仙は眉を顰めた。

「仙はお前が思っているより、いいものでも、甘いものでもないぞ」

「分かってる。人間ではなくなることも。人の心が消えていってしまうことも」

「分かっておらぬ。仙は本来、悪しきものなのだ。(ごう)の塊じゃ」

「私は、仙婆が悪しきものには見えない」

 むしろ尊敬すべき対象だった。

自分が楽をしたいから、老体のふりをしていると分かっても、卑怯だなとか嫌な気持ちは一切生まれなかった。

仙らしいと笑って済ませられる程度だった。

それに、長生きするために、仙術をなるべく使わないためとはいえ、身よりのない孤児を育てているのは、尊いと思う。

来る者拒まず、去る者追わずで淡泊な性格だけど、子供たちを気にかけてくれているのは十分伝わってくる。

 子供たちが困っていたら、必ず助けてくれる人だ。

こうして雪蓉が落ち込んでいたら、話を聞いてくれる優しい人だ。

「わしが饕餮を鎮める仙となったのは、饕餮がわしの息子だからじゃ」

「え……?」