すると、雪蓉の隣にいつのまに来たのか、仙が両手を後ろに組んで立っていた。

(全然、気配がしなかった……)

 ぎょっとしながら仙を見ると、仙は雪蓉の隣にあった大きめの石に腰を掛けた。

仙は、小さな女巫たちと背丈が変わらないので、見下ろす形となる。

「仙婆は、私が帰ってきたこと、どう思った?」

 雪蓉が帰ってきて第一声が「出戻ってきたのはお前が初めてだよ」と呆れたように言われたことを思い出す。

「別に、どうも思っておらんよ」

「迷惑だった?」

「迷惑ではない。お前がいると助かることも多い。あの子たちは、今でこそ多少は使えるようになったが、最初は酷いものだったんだよ」

 あの子たちというのは小さな女巫たちのことだ。

 雪蓉は黙って仙の話を聞いた。

「饕餮に捧げる料理は、ほとんどわしが作っておった。

家事も畑仕事も家畜の世話も、一日働いても終わらない日が続いたよ。

大変だからなのか、お前がいなくなって心細かったのか、夜中にすすり泣く声も聞こえたのう。

でも、頼れる者が抜けたとしても、案外なんとかなるのが世の常だ。

短期間であの子たちはよく成長した」

「私が今まで、あの子たちを甘やかせていたのかな」

「そうかもしれぬ。だが、ゆっくり丁寧に成長していくことも、悪いことではない。

将来自立できるようになりさえすればいいのだ」

 ……自立。

それができていないのは、実は雪蓉自身なのではないかと思った。