後宮の庭園に幕が張られる。
部屋の扉は開け放たれ、中に設えた豪奢な背板のある椅子に皇帝である劉赫が座る。
その隣には、いつもよりも着飾った姿の、貴妃である雪蓉。
庭園の隅には、数人の官吏と女官が立っていた。
華延は後宮を出る準備をすっかり終えて、後宮の外には馬車が用意されていた。
これから、実家のある華南の万寧へと下り、静かな余生を過ごすのだという。
華延が庭園の真ん中に、進み出る。
頭を下げ、拱手の姿勢で皇帝のお言葉を待つ。
皇太后である華延の身分を考えると、わざわざ頭を下げる必要はないにも関わらず、華延は礼に従った。
華延の中では、息子というよりも皇帝という意識が強いのだろう。
劉赫もそれを感じ取り、皇帝として妃嬪と相対する様を崩さない。
「顔を上げよ」
皇帝から許しを得て、顔を上げた華延は、以前会った時よりも清々しい表情をしていた。
華延は、目を細めて劉赫を見つめる。
その穏やかな表情からは、子を愛しく思う母の喜びが溢れ出ていた。
対する劉赫は、皇帝の威厳を保つためなのか表情がまったく変わらない。
母を目の前にして思うところが多くあるにも関わらず、表情を崩さない劉赫を見て、華延は頼もしく感じ、さらに喜びに満たされるのだった。
「実家に下がるらしいな」
「はい。これまで先帝が崩御したにも関わらず後宮に長く居続けてしまい、申し訳ないと常々思っておりました」
「そんなことは構わない。後宮は広大ゆえ、余っている土地も多い。
それに今は妃嬪の数が少なく、今後も増やす予定はない」
口早に言う劉赫を横目で見て、もしかして引き止めたいのかなと雪蓉は思った。
はっきり言えばいいのにとじれったくなる。
部屋の扉は開け放たれ、中に設えた豪奢な背板のある椅子に皇帝である劉赫が座る。
その隣には、いつもよりも着飾った姿の、貴妃である雪蓉。
庭園の隅には、数人の官吏と女官が立っていた。
華延は後宮を出る準備をすっかり終えて、後宮の外には馬車が用意されていた。
これから、実家のある華南の万寧へと下り、静かな余生を過ごすのだという。
華延が庭園の真ん中に、進み出る。
頭を下げ、拱手の姿勢で皇帝のお言葉を待つ。
皇太后である華延の身分を考えると、わざわざ頭を下げる必要はないにも関わらず、華延は礼に従った。
華延の中では、息子というよりも皇帝という意識が強いのだろう。
劉赫もそれを感じ取り、皇帝として妃嬪と相対する様を崩さない。
「顔を上げよ」
皇帝から許しを得て、顔を上げた華延は、以前会った時よりも清々しい表情をしていた。
華延は、目を細めて劉赫を見つめる。
その穏やかな表情からは、子を愛しく思う母の喜びが溢れ出ていた。
対する劉赫は、皇帝の威厳を保つためなのか表情がまったく変わらない。
母を目の前にして思うところが多くあるにも関わらず、表情を崩さない劉赫を見て、華延は頼もしく感じ、さらに喜びに満たされるのだった。
「実家に下がるらしいな」
「はい。これまで先帝が崩御したにも関わらず後宮に長く居続けてしまい、申し訳ないと常々思っておりました」
「そんなことは構わない。後宮は広大ゆえ、余っている土地も多い。
それに今は妃嬪の数が少なく、今後も増やす予定はない」
口早に言う劉赫を横目で見て、もしかして引き止めたいのかなと雪蓉は思った。
はっきり言えばいいのにとじれったくなる。