「華延様が後宮を出る?」

 劉赫と一緒に朝餉を共にしていた雪蓉は、劉赫が告げた言葉をそのまま口にした。

「ああ、もう後宮にいる必要がなくなったからと……」

「それってどういうこと?」

「分からん。俺に聞くな」

 劉赫は雪蓉から目を逸らし、むつけるように言った。

(いや、あんたら、もう誤解はとけたんだから、母子(おやこ)で話し合おうよ)

 呆れて言葉も出ない。

十四年間、顔を合わせなかったから、今さら面と向かって話すことは気恥ずかしいのか。

それにしたって、一度くらいは会ってもいいと思う。

華延が後宮を出ることを決意したのならなおさら……。

(仕方ない、私が一肌脱ぐか)

 劉赫の性格上、素直になれないのだろう。

会いたいと思っていても、自分から言い出すのは恥ずかしいのかもしれない。

華延の方から皇帝に拝謁を願い出るのは、よほどのことがない限りできないだろう。

仙術に冒されていたとはいえ、皇帝を刺してしまったことは事実。

何のお咎めもないならば、自ら身を引こうと思っても不思議ではない。

 かくして、雪蓉のお膳立てで二人が会うことになったのは、華延が後宮を出る日のことだった。