「一時、仙がとても増えた時代があった。

四凶や四罪、四霊に代表される霊獣……。

彼らを鎮める仙は、その能力がたまたま霊獣を鎮めるのに適していたから生かされた。

その他の仙は、その時代の皇帝によって全滅させた。

だが、饕餮を鎮める仙だけは、元から饕餮を鎮めるために仙となった稀有な存在だ。

それが雪蓉の良く知る仙だ。

他の仙とは、そもそもの成り立ちが違うから、雪蓉は仙に憧れを抱いたんだろう。

他の仙を見れば、仙になりたいとは思わなかったかもしれない」

 劉赫はとても悔しそうに言った。

雪蓉が仙になってしまったことを嘆いているのだろう。

 そんな劉赫を見て、雪蓉は妙に冷静になった。

なってしまったものは仕方ない。

魔物だろうがなんだろうが、あの場で仙術が使えなければ、劉赫も雪蓉も生きていなかったのだ。

「仙は、不老不死って本当?」

 これは巷で聞いた噂話の一つである。

仙が馬よりも早い速度で山を駆け上がる姿を見ただとか、膝の屈伸百回は余裕だとかいう真偽不明だった話の中で、仙は不老不死という風聞があった。

前は真偽不明だったが、今ではそれが正しいと分かる。

であれば、不老不死という噂も真実味が増す。

「それも、ある意味では正しく、一方では言葉足らずだ。

確かに饕餮を鎮める仙は、おそらく現在三百歳くらいだと思う。

だがそれは、仙の力を温存しているからだ。

仙の力を使えば使うほど寿命は縮む。

仙は滅多に料理をしないだろう?

仙は食に特化した能力だから、料理を作ると力が減るんだ。

だから、仙は女巫を必要とする。

霊獣を鎮める他の仙にも女巫がいるのはそのためだ」