雪蓉は急に思い出した。

 あるではないか。手作りのものが。

心を込めて丁寧に作った琥珀糖が。

 雪蓉は懐から琥珀糖を取り出した。

常に持ち歩いているこの砂糖菓子。

これ一つで、本当に満足するのか。そもそも雪蓉は仙ではない。

「この琥珀糖に、全てを賭けるしかなさそうね」

 劉赫は怪訝な目で、雪蓉が摘まみ上げている宝石のように輝く琥珀糖を見つめた。

「何をする気だ?」

「仙になる。今ここで」

「はっ⁉」

 予想外の言葉に、劉赫は心臓が飛び出しそうになるほど驚いた。

 そんなことできるはずが……と思うが、雪蓉の顔がいつになく本気で、体から殺気のようなものが溢れ出ている。

 雪蓉は琥珀糖を手の平に置き、瞼を閉じた。

一点に集中し、仙術を生み出そうとしているのが分かる。

そして、何かが起こりそうな予感が、確かにした。

「駄目だ! 雪蓉! 仙になるな!」

「静かにしていて! 集中できない! 何か体の奥から溢れそうなのよ!」

「雪蓉! 俺の話を聞け!」

 劉赫は体から全力で声を振り絞った。

 あまりに鬼気迫る言い方に、雪蓉は軽く目を開けた。

「……仙になったら、人間ではなくなる」

 劉赫は、苦渋の思いで真実を告げた。