その瞬間、後ろから饕餮の角で体を押された。

すると劉赫の体は衝撃で空を舞い、重力によって地面に叩きつけられた。

 腕や足が曲がってはいけない方向に曲がった。

全身を貫く痛みで、意識が飛びそうになる。

 薄れゆく意識の中、神龍の牙が饕餮を貫くのが見えた。

 横たわったまま、動かない饕餮を見て、無事に任務は完了したと安堵した。

 今度こそ、死ねるだろうか。

 死ぬことに恐れはなかった。自分はずっと、死にたかった。

自分の中に恐ろしい神龍が宿っていると知った時から。

 あの日、兄たちを失ったあの時に、自分も死んでしまっていたら良かったのにと何度も思った。

 大好きだった母が、まるで霊獣でも見るかのような怯えた目で自分を見た時、ああ、俺は禍々しい霊獣になってしまったんだと思った。

 兄たちを殺した霊獣の一部になってしまったのだと。

 死んだらきっと、人間に戻れるだろう。

兄たちが迎えにきてくれるはずだ。

母も、俺の顔を見てくれるに違いない。幼い頃のように優しい眼差しで。

 意識を手放そうとした時、饕餮を倒した神龍が正気を戻し、劉赫の体の中に入っていった。

その感覚はとても温かく、気持ちが良かった。

 息をすることさえ苦しかったのに、大きく空気を吸うことができ、しっかりと吐き出した。

 急速に、体が癒えていくのを感じる。

神龍が体の中に入ったことで、驚異的な治癒力を発揮した。

 神龍は依り代がなくなることを恐れたのだろう。

本来大人しく臆病な性格の神龍は、外に出ることを嫌がる。

人間の体は居心地がいいようだった。

(また……死ねないようだ)

 薄れていた意識が戻り、劉赫は自嘲するように笑みを浮かべた。

(これが、俺の運命か……)

 劉赫は大きく深呼吸をして、瞼を閉じた。