ペットボトルの水を口にしたあとのことは、記憶がない。
水を口に含んだ瞬間目の前が真っ暗になって、世界が歪んで、体が宙に浮いたようで、それから音もなく何かが破れるような感覚があった。
目覚めたとき、私は教室の床に寝そべっていた。椅子ごと倒れたらしかった。天井の等間隔の黒い線を満遍なく目で追って、意識があると同時に覚醒した瞬間体を起こしたのだけれど、そこに新見くんの姿はなかった。そしてそれは、彼ともう二度と会うことのないという証明になる。
彼ははじめから知っていたのかもしれなかった。だから言葉では告げずにいなくなったのだ。
たったひとつの紙切れ一枚を、机上に残して。
【残念賞。今日が命日、明日から生き直せ。
追伸
君を見届けたくなった。
どっちもただの水だったことは、現世までで忘れて。】