斜陽が射し込む誰もいない教室で、彼の席に座る。
すると新見くんの席の前の生徒の椅子の、背もたれと向き合うように彼は座り、要するに私たちは向かい合う。
「あなたは死神?」
「まさか。ここにいるだろ」
「でも、不思議な力を持ってる」
「いつ途絶えるかわからない。それにそういうものは古来より短命だ。最近酷い頭痛がする時がある」
「新見くんも死にたいの」
「僕はなるべく生きたいよ。君は?」
「幸せなの毎日。でもだからふと思うんだよ。なんかもういいかなって、冷たいコンクリートに横たわってみたりしてね」
そんなに生きるのが偉いか、と吐き捨てると、彼は笑った。堪えきれずに噴き出したというか、そんな私を少なからず皮肉に思ったのかもしれない。
困り果てて苦しくて、誰かに伝えるにも叶わなかった。誰しもが誰かを糧に生きようと懸命に日々を過ごす中で、酷い疎外感の中に佇んでいた。私はがらんどうそのもので、塵芥にも満たず、生と死で例えるなら、きっと後者そのものなんだ。
二度と手に入らないものに焦がれて落ちて何が悪い。落ちるなんて誰が決めた。私が恋をしたのは死、そのものだ。誰に何を咎められる筋合いはない。そう誰かに正当化されたかった。
それが間違っていると知っていても。
「ここに二つのペットボトルがある」