「ね。ほら見て、またやってる」


 そう言ったのは、友だちの日向(ひなた)だ。

 目をやると、顎で指図された。その先には窓際の席に座る新見燿一郎の姿。彼は机上でひとり、白い紙の上で鉛筆を転がし、何かを記入する。小学生の頃夢中になったような遊びに淡々と明け暮れている。


「あれ、絶対そうだよ」

「そうって何が?」

「未来予知、してるんだよ」

「はぁ。ただの鉛筆転がしじゃない」

「絶対そう。だってこの前体育の先生が脳梗塞で倒れた時も、隼人くんがサッカーの試合で怪我したのも、前日に新見くんが二人に接触したからだって、みんな言ってる」

「偶然でしょ。それに仮にそうだったとして、予知してそれを本人に言ってんのにみすみす倒れてる二人ってどーなの」

「ハルちゃんつべたいっ。仮にも隼人(はやと)くんはハルちゃんの彼氏さんじゃないの? ひどいよー、イケメンエース捕まえて」

「そうだけど…」

葉留(はる)


 噂をすれば、と黄色い声をあげた遥子に、首だけをひねる。松葉杖をついた隼人くんが入り口で手を挙げていて、私は笑顔を取り繕った。