高校三年生の時、女の子のような美しい容姿の男の子と同じクラスになった。
透けるような肌にくっきりとした大きな黒目、色っぽい口の端のほくろにさらさらの黒髪。決まって窓際後ろから二番目の席で頬杖をついて外を眺めている彼は誰のことも寄せ付けず、彼がまた誰に近寄ることもなかった。
だから一部の男子が彼の気を引くために「あいつはゲイ」なんて噂を流したが、それに対して彼が動じることはなかった。
またあくる日には嫌がらせと称して校長が大事に育てていたのに枯らしてしまったという花を彼の机の上に置いてみせたのだが、それに憤るどころか彼はその花を自ら育てて咲かせてみせた。
何をしても暖簾に腕押しで、その存在はどこか私たちを超越し、彼はいつも達観していた。
最早同じ酸素を吸って生きていていいのかわからない場所にいる。そう周囲はのたまい、私もその言葉を信じ敬遠するようになった頃。
彼こと新見燿一郎は、未来が予知出来るなんて噂がまことしやかに囁かれ始めた。