私は気づいたら家出していた。やっぱり、もう限界だった。心の中は藍色一色で、いつも苦しくて溺れてしまいそうだった。

『クマ先生、俺、家出しちゃった』

『まさる、大丈夫か?何処かあてはあるのか?』

先生からの返事が、いつもよりも10倍早くて、私は驚いた。

『公園に泊まる、平気だから心配しないで』

いつもなら、これで最後に励ましのような、見守りのような連絡がきて終わるはずだった。


『まさる、いまから行くから。何処の公園か教えてくれるか?』


私は、少し悩んでから、会うつもりもないのに、公園の場所を送っていた。

誰でもいい。自分を心配して、駆けつけてくれることで、寂しくて、弱い心は、確かめたかったのかもしれない。

一人じゃないってことを。


公園の樹の影に隠れていた私は、公園に来たクマ先生を見て一瞬言葉を失った。クマ先生こと俊哉が、まだ若い青年と呼ぶような年恰好だっだから。

てっきり、その名前通り、クマさんみたいに、少しお腹がぽっこりしてて、ポロシャツにチノパンみたいな格好の、人の良さそうな目尻の下がったオジサンを想像していた。