「できた!」

「お、どれどれ?」

俊哉が、私に近づいて、スケッチブックを覗き込んだ。 


ーーーー少しだけ間があった。その間が、何を表すのか分からなくて、私の鼓動が早くなる。

「……あ、やっぱ先生から見たらイマイチ?だよね」 

俊哉が、大きく首を振った。

「違うよ!すげぇな!優!」

見れば、切長の瞳を子供みたいにキラキラさせて、目尻を下げながら、俊哉が笑っている。

「……ちゃんと心が乗っかってる!いのちが入ってんだよ!……ゆう、凄いよ!」

「あ、ありがとう……」

いつの間にか、俊哉がタメ口になってることに可笑しくなったのと、子供みたいに、興奮しながら、私の絵を褒めてくれたことが嬉しかった。 

親にも誰にも、ちゃんと褒められたことが無かった気がするから。

「あ、ごめん。つい良い作品だったから、大人気(おとなげ)なかったな。一瞬、教師の立場忘れてたし、そもそも描いてくれたの俺の顔だし」

俊哉が、少しだけ頬を染めて、恥ずかしそうに笑ったのを見て、私もつられて笑った。

こんな風に誰かと心から笑ったのは、久しぶりだった。