ベンチの上の電灯の明かりを頼りに、私は俊哉から受け取った、スケッチブックを広げた。

鉛筆を寝かせるように持ちながら、俊哉を見つめる。

すぐに俊哉と目があって、俊哉が、あっ、という顔をした。

「先生?」

「あ、いや、じっと見られるのって、思ったより恥ずかしいな、前向いてていい?」

「あ、……どうぞ」

私がふっと笑うと、俊哉が恥ずかしそうに頭を掻いた。

私は、そのまま夢中で鉛筆を走らせた。俊哉の長めの前髪から、切長で目尻の少し下がった瞳。睫毛が長くて、鼻筋が通っていて、形の良い薄い唇。

俊哉を構成しているモノたちを、鉛筆に乗せて、指に乗せて、私は何も考えずただ、スケッチブックに向き合っていた。

所々、消しゴムで鉛筆の線をぼかしながら、よりリアルに近づくように肌の質感を指の腹で擦って、丁寧に表現しながら、立体化していく。

私が一番好きな瞬間だ。自分の中から、命を生み出して、息を吹き込んでいくような、心地よい感覚が、芽生えていく。