俊哉は、上下黒のスウェットに白いスニーカーで髪の毛は前髪だけ長くて、後ろを刈り上げた髪型で清潔感があった。遠目で、顔は、はっきりわからないけれど、背は高い。手には大きめの黒い鞄とコンビニ袋が見えた。

俊哉は、公園のベンチに腰を下ろして『私』じゃなくて、『(まさる)』を待っている。

時々、公園の背の高い丸型の時計に目をやりながら、俊哉は動かない。

(どうしよう……) 

その時、私が掌で握りしめていた、スマホが震えた。

『まさる、大丈夫かな?どこかで僕を見てるかな?』

こんなの何て返事したらいいのか分からない。私は、スマホを握りしめたまま、俊哉に視線を移した。

俊哉は、スマホを暫く眺めていたが、やがて、星の輝く夜空をぼんやりと見つめている。

『俺、先生には会えません。やっぱ家帰ります』

すぐに返事がきた。

『分かった、何かあったら直ぐに連絡して。あと、コンビニ弁当だけど、買ってきたから此処に置いておくから』  

俊哉は、手に持っていた、コンビニ袋をベンチに置くと立ち上がった。