「白桜さん、ちょっといいですか?」

真紅ちゃんのいなくなった病室で、白桜さんに静かに言った。

屋上に連れ出された白桜さんは、黙って俺の言葉を待っているようだ。先を歩いていた足を停め、振り返る。

「いいんですか? 百合緋様が海雨ちゃんと仲良くしてるの、黙認していて」

「百合姫は自責の念から、自分から友達を作るのが苦手だからな。真紅には感謝している」

実際、真紅ちゃんという存在がなければ、百合緋様が無条件に傍にいくような友達は出来なかっただろう。

白桜さんは幼馴染で親友だけど、どこか保護者然としてしまうところがあるように見える。

そっと、目を細めた。

「――白桜さん、確認したいことがあります」

「なんだ?」

「銀(しろがね)は鬼の色だと聞いています。ただの人間の俺には判断出来ないので訊きますが、兄貴の瞳の色はまだ銀です。――本当に、兄貴にはもう鬼性(きしょう)はないんですか?」