頭の中で反芻する、タイムマシンで目にしたRエネルギーの全貌。リオの研究室にあるRエネルギーに関する膨大なデータ。皮肉にも歴史を変えた男がまとめた資料を、天才少年レイが読めば自分のすべきことが自然と分かった。
 レイはタイムマシンを使って、過去へと飛んだ。リオがメトロポリスを訪れた、すべてが始まったあの日に。

 未来では当たり前となった瞬間移動の技術を使い、摩天楼に潜入し爆薬をしかけた。そして、プラットフォームで幼き日のリオに話しかける。

「待てよ、リオ。今年の花火は1時間早いんだ。ここが特等席だから、よく見てるといいよ」
「レイ兄ちゃん・・・・・・なんで・・・・・・」
「お前がタイムマシンを作ったから、病気が治ったんだよ」

 驚くリオに、レイはこれから起こる全てを話した。

「リオを助けるために、ここに来た。弟を悪魔になんてさせない」

Rエネルギーを使っての、遠隔発火。レイが仕掛けた爆薬に、様々な薬品が炎に反応し、赤、青、緑とさまざまな炎を上げる。遠目に見た爆発はまるで花火のようだった。

「終わりにしよう、リオ。俺はもう死んだんだ」

約束の花火は別れの炎となった。この炎が、弟の未来のレールを切り替えてくれることを願う。RAYの生まれない未来へ。

「いやだ!消えないでレイ兄ちゃん!やっと会えたのに!」
「今日は独立記念日だ。リオが兄離れして、俺から独立するお祝いの花火だよ」

レイは弟に笑顔を向けた。赤く燃える摩天楼の炎が徐々に弱まり、細い一筋の煙が上がった。その煙とともにレイの魂は天へと昇り、タイムパラドクスの残像は陽炎のように消えた。