プラットフォームで摩天楼を見つめた翌日、リオは巨大企業の門を叩いた。摩天楼では、既に面接はAIの手によって行われていた。たとえ子どもであっても、出自を問わず平等に適性審査される。人事選抜用AIの導入によって、主観と面接官の私利私欲にまみれた入社試験よりも遥かに適切な人員を雇うことができるようになり、業績は飛躍的に上昇した。

 素直さは勉強をする上で強い武器になる。スポンジのような吸収力が期待されたリオはタイムマシン開発用AI研究者採用試験に見事合格した。リオが摩天楼に入社した日、シンギュラリティ・クロックの時刻が7年後の春になったとニュースが報じていた。お祭り騒ぎの中、リオは歓迎された。

 町中を見渡せる高層階で研究をするリオは時折、大病院を見つめた。レイの病気の治療法が見つかるまで、あと3年。