英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

 ……まぁ、ルイは謙虚で良い魔王なのだ。
 本人が緊張しているというのだから、そういう事にしておこう。

 
 ルチアーノがルイへ助言を始める様子を見守りながら、ティーゼは、余計な事を言って話しを長引かせるのは利口ではないと判断して黙っていた。

 しばらく噴水の方を横目で眺めていると、ルチアーノに話を聞いたルイが「なるほど、そうか」と答え、唐突に「ティーゼもそう思うでしょう?」と同意を求めて振り返った。

 話しを聞いていなかったティーゼは、思わず「え」と疑問の声を上げかけた。

 ティーゼはルイの顔を視て、慌てて声を呑み込んだ。ルイは自信がついて明るくなった表情をしていた。折角練習で調子を掴んだルイに対して、聞いていなかった、と答えるには雰囲気を壊してしまいそうな気がする。

 うん、練習を無駄にするような行動はとらないでおこう。

 彼らがどんなやりとりをしたのかは不明だが、ルチアーノを見やれば、あなたは同意すればいいのです、と目が語っていた。