公園といっても、高さのない花壇が並んだ花園のようなもので、散歩道が設けられ、敷地の中央に小振りな噴水が一つしかない場所である。

 小じんまりとした噴水はどことなく外観が古く、そこには建設記念日が刻まれていた。


「三百年前、この町で産まれた英雄の功績を祝った際に建てられたものです」

 ルチアーノが、つまらなそうに言った。

「彼は神官でした。聖魔法を使える人間でしたから、異界から発生する瘴気も払える腕っ節の強い男ではありましたね。我々がつまらない天界の内乱に巻き込まれて戦っている時、影響を受けた地上を守り抜いたのが、彼です」
「え、天界? 天使がいるの?」

 聞き捨てならないぞ、とティーゼは問い返した。

 ルチアーノは、唖然としたティーゼの表情を見るなり、またしても下等種を小馬鹿にするように鼻を鳴らした。

「私達のような生粋の魔族である『悪魔』もいるのですから、当然『天使』もいますよ。彼らはエネルギー体で寿命事態存在しない特殊な存在ですし、人間とは異なった思考の持ち主ですので、地上に降りる事は一切ありませんが」