精霊は銀や黄金の髪が多いが、ティーゼの髪はくすんだ薄い金髪でぱっとせず、瞳の色も濁った緑色と人間族に多い色合いだった。母のような女性的気品もなければ、父のように神秘的な落ち着きもない。

「混血児に関しては、確かに珍しくはない話しです」

 ルチアーノは、そう認めつつ先を続けた。

「しかし、数が少ない【予言の精霊】の血を引いた人間は、どの精霊混じりよりも無力な代わりに、人間側も知っているほど強い特徴を持っています」
「『人としての生涯で一度だけ未来を夢に視る』事でしょう? 私の両親がそうだったから知ってます」

 ティーゼが答えると、ルチアーノが意外そうに片方の眉を上げた。まるで、それだけしか知らないのかと問うような眼差しだった。

「彼らが未来を視る前と後に、変化はありましたか?」
「いや、特にはないですけど……?」

 ティーゼの両親は、とても精霊族らしい幻想的な美貌を持った夫婦だった。彼らは、ティーゼが三歳の頃に未来を視たが、記憶を辿ってみても、未来を視る前も後も特に変化はなかったように思う。