「昨夜も思いましたが、その小さな身体のどこに食べ物が吸収されているのでしょうね」
「胃袋です。ルチアーノさんは、果物とか食べないんですか?」
「生憎、それを食する種族ではないので要りません。陛下は気分によって口にはしますが」

 なるほど、それで果物も完備されているわけか、とティーゼは納得した。

 昨夜の豪勢な食事の席でも、ルチアーノは食が細かった。あの時聞かされた話だと、強大な魔力を持っている生粋の魔族は、人間のように毎日数回食事をとる、という習慣がないらしい。

 魔王の場合は、膨大な魔力を収める特別な器の持ち主のため、満腹という感覚すら持ち合わせていないとう事だった。しかし、ルイは人間に親しみを覚えていて一日三食、午後の三時には間食をするという生活を好んで送っているようだ。

「ルチアーノさんって、クッキーは食べるのに、パンもフルーツも食べないなんて変な魔族ですね。人間はそれを偏食と呼びます」