「地上で悶々とされても気分は晴れないでしょう? 予定としては、陛下が戻り次第場所を移して事前練習。その後、鍛練の一つとして走り込みをしているマーガリー嬢を、待ち伏せして手紙を渡します」
「待ち伏せ……」

 ティーゼは、優しい笑顔の似合う魔王について思い返し、「やっぱり夢じゃなかったんだなぁ」と残念そうにルチアーノを見やった。

              ◆

 寝室を後にしたティーゼは、ルチアーノに朝食について訊かれた。

 昨夜沢山食べた事もあって空腹感はなかったので、辞退を告げたのだが、ルイを待つべく客間に向かうと、そこには新鮮で美味しそうなフルーツが用意されていた。

 フルーツは食事というより、デザートの範囲内だ。屋敷にいる姿の見えない使用人はよく分かっているじゃないかと感動し、ティーゼは、一人で皿いっぱいのフルーツを完食した。


「ごちそうさまでした」

 そう告げて濡れ布巾で手を拭ったところで、ルチアーノの呆れたような視線とぶつかった。