両親は、ティーゼが十三歳の時、眠るように亡くなった。

 精霊の原種族と人間の婚姻があったのは、大昔の事で、ティーゼのように平凡な人間として産まれる者も多い時代だった。両親は無事に精霊界へ旅立ったが、自分には精霊王の迎えはないだろうと分かって、ティーゼが前触れもなかった両親との別れから立ち直るには、しばらく時間が掛かった。


 とはいえ、傷跡に関しては、ティーゼ自身あまり気にしてはいない。


 少年服であれば見事に隠れてしまうので、隠す事に苦労はなかった。昔から男の子に混じって走り回っていた事もあり、動きやすい利点も知っていたから、スカートを履いてみたいという欲求もない。

「でも、ずっとそれを引きずってる奴がいるんだよねぇ」

 町のいたるところに貼られたポスターに、腐れ縁のようにずるずると関係が続いている幼馴染の名前を見て、ティーゼは足を止めた。

 幼い頃、街で走り回っていたティーゼ達のもとへ、ちょくちょく遊びに来ていた貴族の少年が、ポスターに描かれている彼だった。彼と過ごすようになって二ヶ月が経った頃、一緒に半魔族の騒ぎに巻き込まれたのだ。