あの日、後方には戦えない女性や、自分達よりも小さな子どもが多くいた。「ああ、ここで少しでも食い止めなければ」と、ティーゼと友人達は、選択の猶予もなく戦う事を決意して敵に挑んだ。

 剣の腕が弱いクリストファーがついて来て、敵の矛先が彼に向った時には「しまった」と思った。

 もう間に合わないと悟って、動ける全員が、彼を庇うために防御を殴り捨てて飛び出した。大事に育てられているであろう少し世間知らずのクリストファーが、可愛い弟分のように思えて仕方がなく、咄嗟に守らなければと全員が我が身を呈したのだ。

 仲間達の中には、仕事や病気で肉親を失った者もいた。親のいない子供達も多かったから、同じ年頃の子ども達の集まりに、ひょっこりと加わった華奢なクリストファーは、彼女達にとって、初めて出来た弟分のような存在でもあった。

 その結果、ティーゼは胸元を切り裂かれ、仲間達は腕や肩や背中に大きな傷を負った。