温泉なんて滅多に利用できるものじゃない。

 ティーゼは、素早くルチアーノの手を握った。魔族としての体質なのか、真っ白な彼の手は、ひんやりとして冷たかった。

「食後には温泉に浸かってもいいですか」
「欲望に正直な方は嫌いではありませんよ」

 薄ら暗いやりとりが成立したところで、ルチアーノが早速、ティーゼの泊まりの件について許可を取るべくルイに伝えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。

「いいね、友達を別荘に招いて食事して泊まらせるなんて初めてで嬉しいよ。あ、夜は枕投げでもする? 人間はそれが好きなんでしょう?」
「ルイさん、私は一応女性なので、それはちょっと頂けないかと」
「そうですね、仮にもコレは女であるらしいという残念な事実がありますので」
「ルチアーノさんは一言多いです」

 屋敷の主人の許可が出たところで、ティーゼの一泊が決定したのだった。