「不安がおありなら、プレゼントの時と同様に、練習してみては如何でしょうか? 時間と場所を事前に想定しておけば、陛下に限って失敗という事はあり得ないでしょうし」


 二人の様子を傍観していたルチアーノが、ふと、そう言った。

 ティーゼは、聞き間違いだろうかと数秒考え、聞き間違いであって欲しいと思いながら彼に視線を向けた。

「……もしかして、プレゼントの時も、渡す練習とかしていたんですか?」
「光栄ながら、大きさの違う箱を、陛下から手渡される練習台を務めさせていただきました」

 ルチアーノが淡白な声で答え、含むような目をティーゼに返した。

 出会い頭から続いている巻き込まれる感じを思い起こし、ティーゼは嫌な予感がして、早々に退出しようと勢い良く立ち上がった。


「では私はこれで失礼しますねッ。お腹もすいたことだし、それじゃあさようならマーガリー嬢にうまく手紙が渡せるよう祈ってます!」


 最後は一呼吸で言い切り、図書室の出入り口まで駆けて扉に触れた瞬間、ひんやりとした大きな手に、肩をガシリと掴まれた。