「その無駄な腹黒さと自尊心に目を瞑って、相手に優しくしてやれって事ですよ」
「そんな価値がある相手であれば申し分ないのですが、今までそういった女性は目にしたことがありません」

 ルチアーノは本を閉じると、口角を薄く引き上げてこう言った。

「私や陛下より美しい女性が、この世に存在するとお思いですか?」
「…………うん、そういう風に考えちゃうんですね。だから、そういうところが頂けないんですってば」

 こいつは駄目な方の残念な美形だ。

 いや、美形だという自覚があるのも問題だが、ルチアーノの自信は一体どこから来るのだろうか。やはり、種族間の違いのせいか?

「くそッ、性質の悪い美形め……。ハッ、まさかとは思いますが、全女性にそんな態度で挑む訳ではないですよね?」
「前半の愚痴、しっかり聞こえていますよ。私も相手はきちんと選んで対応していますし、勿論、場もわきまえています」
「……あれ、おかしいな。むしろ私だから遠慮がなくて当然だ、っていう風に聞こえるんですけど」